誰しもが学校で習い、知っている名曲。
近いところでは、福島県の作曲家古関裕而氏をモデルとしたNHK連続ドラマ小説(通称:朝ドラ)「エール」にてヒロインの音がかぐや姫の劇で歌い、涙をされた方も多いのではないでしょうか。
歌詞
菜の花畠に、入日薄れ、
見わたす山の端は、霞ふかし。
春風そよふく、空を見れば、
夕月かかりて、にほひ淡し。
里わの火影ほかげも、森の色も、
田中の小路をたどる人も、
蛙かはづのなくねも、かねの音も、
さながら霞める 朧月夜。
作詞
高野 辰之(たかの たつゆき)1876年~1947年
国文学者、作詞家。
長野県下水内郡豊田村(現中野市永江)の豪農出身。
高野氏の底流には「人間の喜びや悲しみの叫びが歌謡の起源、身振りは舞踊、物真似は演劇の起源」という考えがある。
「その国の童話にはその国の国民思想がこもっている。今日の小学校国語読本は、日本より外国の童話を多く採用している。自分の屋敷の美しい朝顔に気付かないで、隣から貰った朝顔を眺めているようなもの・・・」と、嘆いており、日本各地に伝わる童話を調査し、再話作品を発表する。
主な作品は、誰もが知っている「故郷」「春が来た」「春の小川」「朧月夜」「紅葉」など。
作曲
岡野 貞一(おかの ていいち)1878年~1941年
作曲家
鳥取県邑美郡古市村(現在の鳥取市)出身。
幼少期に父を亡くし、貧困の中で育つ。
キリスト教徒である。
主な作品は、高野氏と同じく「故郷」「春が来た」「春の小川」「朧月夜」「紅葉」など。
他に「桃太郎」が有名です。
更に、日本に留まらず樺太、台湾、朝鮮、満州まで、160校を超える校歌を作曲されたようです。
楽曲について
朧月夜は、1914年(大正3年)当時の教科書である『尋常小学唱歌 第六学年用』に初出されました。
1948年(昭和23年)から小学校6年生の音楽教科書において採用されたことにより、多くの人々が知るようになります。
実はこの曲、3拍子なのです。
高野氏の出身である長野県の北信地方一帯は、江戸時代から菜種栽培が盛んで、春には一面の菜の花畑が広がっており、その光景をモチーフにしたようです。
歌詞の描く情景は、春の夕方5時頃〜6時頃だと思います。
「朧月夜」は、ぼんやりとかすんで見える春の月で(現在では三日月と考えた方が良いようです)、その月の出ている夜のことです。
それを踏まえて歌ったり、演奏しますとまた深みが出てくると思います。